大人になればなるほど、1歳という年齢差が持つ意味は希薄になるらしい。



けれどその段差が消えてなくなるまで恋をするななんて





若くて素直で可愛らしい私たちには無理なのだ。









精 神 年 齢 1 3 歳










「はいはーい、みんな頑張ってるかなぁ?」




「小野寺先輩、お疲れさまっス」
「何だまた来たんですか先輩」
「お前、何だかんだ言って暇なのな」


「ああーっ!!もうせっかくこの一美様がひやかしに来てあげたのにっ」


「それ、まったくありがたくないし・・・」
「うるさいっ!!この輝くスーパーのビニール袋が目に入らぬか!」
「あーっ!先輩優しい!最高!」
「あー、そうだこれ人数分足りないからじゃんけんしてねー」
「何だよそれー」




自分でも言っているとおり、一美は時々こうしてサッカー部をひやかしにやってくる。
もともと去年の部長の幼馴染みだかなんだかで遊びにきてたんだけど、その部長が卒業してからも何かと遊びに来ては、いないマネージャーの変わりに世話を焼いたりしているのだ。
彼女本人は3年だから、放課後の予定なんて入っていない。


一美のことを部員達はいろいろ言っているが、実は部内で結構人気があるのだった。



「ああもうあんたたち、そんなに余裕がなかったら勝てるものも勝てないわよ!」
「それは小野寺とは関係ないだろ」
「うーるっさーい!」
「今日は何をしに来たんですか」
「ダーリンに会いに」
「・・・馬鹿ですか先輩」



ホントだもん。


私と裕樹は付き合っています。


学年がいっこ下だから先輩に色々言われていやだとか、なんかそういう理由でらしい。
隠しとくことは別にいい(というかなんか秘密って甘美な響きよね)んだけど、多分ばれてると思うよ、うん。



ちらりと彼を見ると、照れたように頭を掻いた。可愛い。







「なんで小野寺って辻にばっか優しくするわけ?あいつはポカリでおれはコーヒー牛乳とかマジありえないし!」
「だって祐樹は礼儀正しいし、可愛いしー。それにあんた、身長もうちょっと欲しいって言ってたじゃん」
「だからって運動してコーヒー牛乳って罰ゲームだよなー」



さっきちらりと一美と鈴木先輩が話しているのを聞いてしまった。
礼儀正しいはいいとして、可愛いという言葉。



一美はよくその単語を口にする。
そのたびに俺がどう思うとか、考えてるんだろうか(絶対考えてないだろうけど)



「ね、祐樹。帰ろ」



そういって笑う一美に、俺はいつだって誤魔化されているような気がする。


告白も一美から、練習を見に来るのも、みんな一美から。
年はまだギリギリ同じのくせに、学年が違うだけで先輩後輩になるし。
結局俺は後輩とか、可愛いとかそういう理由で遊ばれているだけなんだろうか。



くそ、なんだかむかついてきた。
だから俺は初めて一美を無視してみた。



「ね、祐樹」
「・・・・・・・」
「祐樹?・・・祐樹ってば!」
「・・・・・・・・・」
「もういい、鈴木と帰るから」
「!」
「・・・嘘だよ。怒った?」



結局何もかも一美の手の上に。



そして嫌というほど自覚する。
俺は一美が好きだ。
けどそれは女としてで、先輩としてじゃない。
たったひとつしか違わないくせに、どうしてそんな態度で。








「どうして?」




祐樹は時々拗ねたようになって口を聞かなくなったりする。
反抗期かなと思っていたんだけど、どうやらそうじゃないらしい。



薄暗い帰り道を祐樹と並んで歩く時間が私はなによりも好きだ。
サッカー部でみんなをからかって遊ぶよりも好きだ。
それになんだか、帰り道の祐樹はとても男らしく見えて、そのくすぐったさを感じたくて。




「俺は一美の弟じゃないし」


唐突にそんなことを言うから、一美は驚いて瞬きをゆっくり2回、した。



「当たり前、じゃない?」
「俺が可愛いとか言われて嬉しくないとか分かってて言ってる?」




それでやっと、私は祐樹の謎の反抗期の正体が分かった気がした。




「ああ、うん、それはごめんなさい」
「・・・・・・いいけど」
「だって祐樹可愛いんだもん」
「!(まだ言うか)」
「ちがくて!可愛いの定義、分かってる?」



そう言って見上げると、祐樹は少し顔を赤くした。
やっぱり可愛い。



「私から言わせれば、可愛いには2種類あるのよ」
「?」
「大人の男の見せる可愛さと、ちっちゃい子の可愛さは違うってこと!」



また少し祐樹の顔が赤くなる。
やっぱり、可愛いなあ。


そういったら、祐樹は複雑そうに一瞬考えて、それから「今のは子供の方だろ」といって怒り出した。



そういう所が可愛いんだけど。



「祐樹私、かっこいいって言葉より可愛いの方が優れていると思うの」
「もういいっすよ、フォローは」
「ああっ、本気で言ってるのに!」
「ハイハイ、でも俺気にしないことにしたから。一美のそういうの」
「え、何どういう心境なの」
「一美さ、精神年齢でいったら俺より下」
「なっ!!なによー!」
「そういう所とか」




なんだか祐樹が嬉しそうだ。
だから私も笑ってみた。




夕闇の中の祐樹がとても男らしいとか思ったことは、次の反抗期にとっておこうと小さく心の中で私は決めた。









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