明るい子っていうのはどういう子のことを言うのだろう。








   
ふ た り







よく分からないけど、私はその「明るい」方にカテゴライズされているようだ。
一緒にいるジンはあまりたくさん話したり笑わないから、その分だけ私が目立つみたいだ。



私が話しかけて、ジンが応える。
そういう関係になったのは、いつの頃からだろうか。




ジンは笑ったり騒いだりしない代わりにものすごく冷静だ。
だから私が落ち込んでいたりするとなんでもないような顔で諭すように慰める。それが癇に障って喧嘩をしたこともあったけど、昔からそうなのだからそういう人間なのだと今は割り切っているから前よりも衝突は少ない。


そんな、友達。




「なんで笑ってるの」


「なんでもないよ」




ジンが笑わない分だけ私が笑う。


ジンを形作るものは、一つ一つはさほど美しくはないけれど、すべてがジンという形に結合することで、何かひとつのもののために作られた楽器のようだった。それは飽きっぽい私からすれば何か特別な香りを感じるひとつの要素で、中学のときに初めて出会ってから私たちは一緒にいた。
勉強も出来るし、運動だって、高飛びをする彼の姿は一級品だ。
そのかわりに笑顔をどこかに落としてしまったとしても文句は言えまい。


だから彼が笑わない代わりに私が笑うのだ。
もし彼が声を上げて笑うようになったとしたら、私は笑うことをやめてしまうだろう。




「何かいいことでもあった」


「べつに何もないって」




彼が世界が終わってしまう一秒前みたいな顔で何かを考えているときに、私はなんでもないような顔で笑い、時々私が世界中の悲しみを一手に引き受けたような顔をしているときには彼がそれと同じくらいに顔を歪めた。


シェアしているようでいて、本当はジンがいつか起こすかもしれない奇跡を待っている。
すぐそばでそれを見られる日を楽しみにしているのだ。
笑うしか出来ないから、やっぱりいつもなんでもないことで笑いながら。




「お前はいつも笑ってる気がするよ」


「ジンは笑えないの?」




そう言うとジンは唐突に、けれど自然に私の手を握った。
本当は知っている。彼だって笑顔を浮かべるときがあることを。


その時私たちのいる壁に仕切られた空間にいつも同じ人がいることを私は知っている。
私ではなく、ジンと同じように笑顔を見せない彼女のために、ジンもまた笑うのだ。




私は彼の手の感触を確かめるように握り締めた。


ジンも同じように握る手を強めた。


大切に、大切にしているようで、ひとかけら、このまま壊してしまいたい衝動に駆られる。
将来来るかもしれない、私が笑わなくなる日のことを考えると、ますますそのかけらは増殖する。


けれど私はきっと、いつまでも笑っているのだろうと思う。


私には笑うことしか出来ないから、
曖昧な微笑を浮かべる彼のそばで、私は笑える限り笑い続けるのだと思う。彼の隣で。















(12/20/2003) なんとなくにおい的にふたりとも分かってる。




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