...

同じ瞬間に生まれた人同士は、細胞が生まれ、壊れていく速度も同じように


死ぬ瞬間も同じ・・・・・・になるわけではないらしい。



結局いつ生まれようがあんまり変わらないのです。



ちいさい私とおおきなあの子。
普通の私と可愛いあの子。


変わりすぎてる私たち。
けどそのほんのささやかな共通点が、なぜか少しだけ好きなのだ。








ド レ ッ シ ン グ







一美ちゃんは私と同じ誕生日です。
10がつ24か。



ちょうど、夏に生まれた慎一(彼氏です)は
「夏の赤ん坊は汗疹がひどいらしいよ」と言っていたので、いい時期に生まれたらしいです。
秋を愛する人は、僕の恋人なのです(そんな歌があった)



小学生の頃は、ずっと同じクラスで、誕生日の順に席や出席番号が決まっていたから、いつも一学期の初めは一美ちゃんの背中を見つめて授業。
一美ちゃんは「はついく」がよかったから、前の前の席の子との会話がしにくかったんだけど、なぜか居眠りとかはすぐに発見されていた。なぜなら一美ちゃんも寝てたからだ。



中学に上がったら、名簿は名前順に変わった。
「おの まどか」の私と「おのでら かずみ」の一美ちゃんはやっぱり一緒だったんだけど、背中をみることはなくなって。掃除の班も微妙な加減で離れた。
2年生に上がるとクラスも離れたから、それきり疎遠。


もともと席が近いのにあんまり話さなかった。
だって彼女はなんか分からなかったから。
よく言えばミステリアス。
私たちが昨日のテレビの話題で盛り上がってる時には興味なさそうに机をコンパスで彫ったりしてるくせに、南米の魚のこととか、そういうことに詳しいのだ。
けど本当は、そういう話、少しだけ好きだった。
・・・ということに、離れてから気付いたのでした。






「ねーねー、3組の小野寺さん、2年の辻君と付き合ってるんだってさ」
「マジ!?」
「んー、ほら私バド部だからさ、サッカー部と仲いいんだわ、隣だし」
「なんかあったの?」
「チューしてるとこ見た。倉庫の前で」
「前!」
「なにげに一緒に帰ってるしね」
「まどか、小学校から一緒なんだよね?」
「あー、うん」


なんか意外なひとだ。
(というか、女子のネットワークはすごい)


「年下かー」
「うーん、私はパス」


私もパスだ。
というかどういう接点があるんだろう。


「小野寺さんてさ、去年大葉君に告られてなかったっけ」
「そうそう、もてるからねあの2人」
「でも年下なんだね」
「えーでもいっこでしょ?違うって言っても」
「いやでも大きいよ?」
「そっかなー」


逆はたくさんあるけど、年下の彼氏というのはなんだか「さすが目のつけどころが違いますな!」という感じがした。
どうやったらあの一美ちゃんが人を好きになるのだろう。
どんな会話をして、どんな風に一緒の時間を過ごすのだろうか。







移動教室で廊下を歩いてる時、一美ちゃんとすれ違った。
しばらく会わないうちに、彼女はなんか、綺麗になっていた。


同じ日に生まれたふたり。



けど彼女はきっと、すごいスピードで毎日脱皮を繰り返して、もうすでに私と同じなんかじゃないのだろう。
恋すると綺麗になるとかそういう類だろうか。
ああ、でもそしたら私は慎一に謝らなきゃいけないな。








すれ違い終わってから、マキが「かっわいいよねー」と言った。


一美ちゃんは可愛い。
なんだかうれしい。
けどすこしだけさみしい。



ドラえもんはドラミちゃんを見てて切なくならないのだろうか。
棚の奥で忘れられたドレッシングのように、完全に油とドレッシングは分離して。

薄暗い視聴覚室で流されるモーツァルトの生涯のビデオを見ながら、ドラえもんとドレッシングの図を机の端に書いていたらマキに見つかった。

「な、ウケるー、具ってなに!具って!」
「いや、油と、具」
「やる気のない絵が、絵が!ドラーえもーん!」

「そこうるさいぞ!(何だドラえもんて)」


「小野さんが机に落書きしてますー」
「金澤さんがうるさくしてきますー」


ドリル3ページが宿題に出された。
なんで私だけ・・・!




放課後。
職員室から出る所で一美ちゃんと一緒になった。

私はさっきの授業のことで呼び出され。
一美ちゃんは・・・日直か何からしい。


「小野さん?」

なぜか話し掛けられた。
私が頷いて視線を合わせると、一美ちゃんはほっとしたように頷いて話を続けた。
名前、覚えられてないらしい。ちょっとショック。

「さっきの、音楽の先生のとこよね。この前私も怒られた」
「児島?」
「そーそ、コジマ先生。ちょっと机に落書きしただけなのにねー」
「あ、私も落書きで怒られた!友達がそれ見て爆笑したせいでバレて・・・」
「マジでー?」

一美ちゃんがくだけた口調で話すから、なんか私も普通に話し出して。

「一美ちゃんは・・・あ」

つい一美ちゃんとか呼んでしまった(馴れ馴れしい)
けど一美ちゃんは「あ」の方に爆笑し出してしまった。

「小野さんておかしいよね」
「そ、そうかな。か、小野寺さんも面白いと思うけど」
「一美でいいって!ウケるー!可愛いすぎ」
「・・・か、一美ちゃん」
「あはは、なんかいいね、小野さんは」
「まどかです下の名前・・・」

ひとしきり笑ったあと、少し立ち話をすると、一美ちゃんは去って行った。
サッカー部の例の彼の所に行くのかもしれない。

なんだか普通の子だった。
当たり前だけど。


けれど、なんだかそれが嬉しかった。








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