カンタンなこと。



けどそれをそのまま実行できる出来ない



上手い下手じゃなく、それが出来なかったりしなかったり。



それが大人になるということ。



全て悪いことをみんな大人って言葉でくくれるくらいに、確かに子供な僕ら。












ホ ー ム グ ラ ウ ン ド












「えー、あー。なんかもう、いいっていうか、飽きたし」


知る限り8回目の「飽きた」。
エリはかなり飽きっぽい。



水をかければ一瞬で乾きそうな屋上のアスファルトに、その継ぎ目から生えた草を放り投げながら僕らは日陰で座りこんでいた。
下ではなんか、夏休みに入ってまだすぐだというのに運動部がぱらぱらと練習をしてる。
いつも練習してる僕らも、ここから見たら「ぱらぱら」なのだろう。なんか、小さい。
明日からはまた僕もあれに混じることになる。


「でもさ、夏入るんだから!とかって付き合ったんじゃなかったっけ」
「あー、やっぱり付け焼刃はダメだね!」
「(意味違うし)確かにね、うん、斎藤はいけないね。なんかオーラがさ」



もう別れる!って言いに来るのはいつも僕の所。
それはどんなにエリの恋人が変わっても変わらない。



眼中にないっていうか、もうそういうのを知り尽くされてて感情がわかない、とエリは言っていた。
けどエリは知らない。僕だけが安全な場所で、君を狙っているということを。



「短い命だった・・・」



わざと感慨に耽るようなセリフ。
付き合ったというか、たった1週間で感慨も何もないだろうに。



「そんなこと言って。全然演技下手だよなエリは」
「何よーアンタは騙しすぎなんだよ」
「騙してないし」
「嘘だ!みんな隆介の笑顔に騙されてるんだわ!」


僕にはこういう話を聞いてるせいか、彼女が出来ない。
これでもエリのことを可愛いといってる奴は多い。
その理由を聞くと、嘘つけエリはそんなんじゃない!と言いたくなるような理想化されたものだったりして。
だから誰を見たって多分同じようなものなんだろうな、と思っていた。



で、不覚にも話をするうちに、僕まで「ちょっと可愛い」とか思うようになってて。



付き合いたいとか、思う。
けどあの飽きっぽさは犯罪。


1度付きあってそれきり、となるくらいなら、この場所の方がマシかもしれない(だって3年で8人って・・)


様子を窺うという理由でだらだらと、また夏休みだ。



「なんかもう、恋とか、いらないかも・・ウザすぎるよあいつ(涙)」
「ウザいって・・付き合ってたんだろお前ら・・・(可哀想に斎藤)」
「だってなんか、メールは日記だし?返信遅いとすぐに電話だし?だからトイレも入れないし」


「(そりゃウザい)」



「やだな・・・もう。あんま好きじゃないし」




ぽつりと言った言葉は、なんだか雰囲気だけ家事に疲れた主婦みたいだった。



「別れたの?」
「ううん」
「別れるの?」
「飽きたって言えると思う?1週間なのに。もう誰も付き合おうなんて考えないよ!」
「エリそれ、かなり失礼かも・・」
「いいの。向こうだって失礼じゃない」
「は?」
「別れたいと思った原因」


ゲームみたいだとエリは言った。



こんな小さな箱の中で、ここから選びなさいと言われているみたいだと。
なのにみんな、最高の彼氏彼女とか言ってて、なんかそこだけおかしなゲームをしてるみたいだと。


「仕方ないんじゃない?行動範囲だって限られてるわけだし。そんなこといったら世界一周しないとダメになる」
「世界とかはいいんだけど。私西洋系の顔はパスだし」
「(顔かよ・・・)ゲームかどうかは別にして、だったらなんでこんなことしてるの」
「・・・青春だし。なんかそういうのがないと落ち着かないっていうか」


「じゃあ、おれにしなよ?」


「はぁ?」という顔をエリはした。



「ダメだよ隆介は。そしたら誰に愚痴をはけばいいの?」
「おれに言ったらいいよ。そのほうが今までよりも生産的だと思うけど?」
「・・・・・・」
「ほら顔だけって言うならおれ、そんなに悪くないと思うし」
「(自分で言ってるよ)」
「他にエリ、男友達いないし。そしたら一番付き合い長いのっておれだし」



なんか必死だと、思ったけれど。



「ああ、なんかわけわかんなくなってきた!」



エリは僕の言葉を遮って、座っていたコンクリートのふちから立ち上がった。



「とりあえず、もう嫌って言ってくる」



「うん、そうしなよ」



結局いつもと同じようにひと通り愚痴をこぼすと勝手に結論付けて別れに行ってしまう。
今日も、せっかく言いかけた人の告白を振り払って。


と、思ったら。


「話はそれからね」



なんだか、これは。進展と考えても、いいのかな。





どうでもいいけど待ってろって、この暑い屋上で・・・。



やっぱりやめた方が良かったのかな。



と、思える余裕が、何故か嬉しくて、生え残っていた草を引き抜くと、僕は熱い陽の当たるアスファルトにそれを投げつけた。








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