くりかえし
くりかえし




何度も名前を念じた。




何か話し掛ける時にはあいつじゃなく僕の名前を。






けど。



「卓ー!みてみてコレ」







プ ー ル 開 き 前 夜 (2)






要と卓は小学校から仲がいいらしい。
そこに卓つながりで中学から合流したのが僕。



だから文句を言うとかそういう筋合いはないんだけど。



要は僕らと一緒に昼休みを過ごし
同じように仲の良い雰囲気を醸し出しているけど・・・
けど1人だけ選ぶなら多分卓なんだと思う。


たとえそれが、一緒にいて3年目だとしても。
卓の記録はその分だけ更新されていく。



「ねえナツ」



いつの間にか、ターゲットは僕に変わっていた。
ああ、卓は日陰でサボってるからか。



呼び方はいまだ「ナツ」卓はなんだかんだいって、人懐っこい分有利だと思う(卓だし)
僕はどちらかと言えば、そう今だって日陰に集ってる女子たちがなんか視線向けてきてるし。
だからどうしても男女の区別とかされるんだろうか。





「この地球外生命体達は一体どこから卵が投げ込まれたんだろうね」
「地球の生命体だよ。アメーバとかアオミドロとか」
「ああ、ミカヅキモとか(理科でやったわそりゃ)」




なんか、覚えたての知識を活用して喜ぶ所とか、可愛い。


「何もないって思ってる所にも色々あるってことだよ。例えば空気中にカビとか・・・」
「うわ、なんかそんなこと考えるともう息したくなくなる・・」




そう言って要は息を潜めた。
そんなことしたって無駄なのに。




「きゃああ!」



なんか4コースの方から歓声(悲鳴?)が上がった。


「あ、なんか卓が面白そうなことしてるよ!貸してもらお?」



要が言うから僕はそれに従った。




「卓貸してーそれ面白そう・・・・・・きゃああ、何なの一緒に振り向かないでよ!」」


「うあ、ごめん!」


本当に悪気はなかったらしい。慌てた卓が天に向かってホースを向けるとあちこちからまた悲鳴が上がる。


「もー、制服って濡れるとごわごわなんだからね!」


なんか怒る所が間違ってる(いや合ってるんだけど)気がする。
白いブラウスは透けてるし、貼り付いた髪の毛とか、もう、なんていうか。



僕以外の誰にも見せたら汚れるとかそういうくらいに女だった。
そう言ってる僕がいちばん危ないかも知れないけど。
ほら、先生がジャージかけてやってるし。この人も一応男なんだよね、とか考えたら、なんかやっぱり汚されてるっていうか、その前にクラスの注目を集めてるから手遅れだ。



なにより卓まで赤くなってるから面白くない。


「いいよ。次は昼休みだし、あーあ、こういう仕事って喉が乾くんだよね」
「マジ?卓のおごり?やっさしー」
「卓は優しいなあ」



上手く丸めこんで一応持ってきているジャージを取りにプールサイドを要のこと隠すみたいに移動する。
多分暑いからそのうち制服は乾くけど、帰りまでジャージで授業とかいう羽目になるんだろうなあ。
これはジュースだけじゃ済まされないよね。



「塩素とか置いてある部屋で着替えていいって」



そういうと初めて要は赤くなった。


「うわ、なんか、やらしい格好してない?私」
「大丈夫、僕しか見ないから」
「見るんかい!」



結局見れなかった(というか拒まれた)




僕らが順々に塩素臭い、そして粉っぽい建物の中で着替えると、要が何故かラムネみたいな塩素をひとつパクっていた。



「それ、何にするの?」
「ええ?勲章」


なんか分からないけど要は笑ってた。


「ナツ」
「ん?」


「ん」とか言いながら、名前を呼ぶ順序が僕の方が先であることがなんかどきっとした。
ああやっぱりこれ、恋とかいうやつですか、と思っていたら



「卓のとこ戻ろ」



卓だった。やっぱり。


「うん・・そうだね」
「あれなんか元気ない」
「そんなことないよ」



「ナツって卓と仲いいよね」
「そうかな」
「うん。なんかすごい羨ましい。ていうか嫉妬するかな」
「誰に?」
「男の子にさー。だってやっぱどんなに親しくても友達っていうか、女友達でしょ」


越えられない壁を初めからもっていないことが羨ましい、と、そう要は言った。



なんだか、それって初めから拒否られてるみたいなんですが。
その、恋愛対象にはなりえないわよ的な発言は。


「僕は要と違う性別でよかったと思うけど?」


意地悪な発言だと思ったけれど。


友達とはなんですか。
どんなに好きになっても責任のいらない好意をぶつけられる対象?
独占欲を持つことも触れることも、許されず。
それを望んでいるのですか。


いろんな意味で、かわされると思った。


「え、あ、うん。ありがとう」

けれど予想に反して要は急に大人しくなった。
それってもしかして。もしかして、ってこともあるのだろうか。


と思ったら、なんか走って卓の所に行ってしまった。
しかも襟首からさっきの塩素入れてるし。


ああいうこと、僕には絶対しないんだよね。



やっぱり今日も明日も、夏休みが終わっても、僕らは3人で弁当を広げるのかな。






明日はプール開きだ。(しかも他のクラスの)







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