テ レ ビ ジ ョ ン

 


たくさんの人が泣いたり笑ったりしていて
それが画面に大写しになるのを可哀想ねとかいう人もいるけど



・・・けどその手はしっかりと美味しそうなクッキーを握ってたりして
所詮はテレビのむこうの出来事で無関係な他人を可哀想だと思えるんだよ自分
・・・とか


そういうアピールって醜いよな、うんそう思う。と
青木君は言った。
ひとりごとが常に多い人だと思ってたけど
(時にそれが私に向けられてたりするから要注意だ)
本当に酷い事件テレビでやってる時に
「わぁ、遅刻だ!」とか言いながらパンを喉に詰まらせてた私としては
ちょっとだけ痛苦しかった。私ってそういうやつなの?



だけどもし、もしだよ
そこに映ってるのが私だったら
どうする?悲しいって思う?



「いや、べつに」



即答だよ。



どうせそういうやつだよ、といじけてたら
どうやら続きがあったらしい。


「テレビだからさ
いろんな人がカメラ突き付けてくんでしょ」



この人は時々、私のいい具合に低い声を出す。



「そこに居るのはまどかじゃないとか思うんじゃない?」



つまりこうだ、実はテレビの中には小人が入ってて
私にそっくりな小人がそこにいるかもしれないからだまされるなってことなのね?
と確認したら
「ばーか」と言って小突かれた。冗談なのに。



私だったらどうだろう?



確かに青木君なら、ニュースに映し出される「在りし日の少年A」みたいな
本当にこの人?っていう写真でも、きっといつも通りふんわりと微笑んで
きっと私は見とれてしまうと思う。芸能人でも見るように。
けど本当に小人が入ってるって思えるんだろうか


いやきっと本当に小人が入っていたとしても
だまされるんだろうなとか珍しく真剣に考えてたら



真剣に抱き締められた。


こういう時に、ずるい、と思った。
どういう時だって、ずるいと思うのだけど。

 

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